夜は音を引き継ぐにふさわしい

暗闇のほうが、音がよく聞こえる。
空気が冷たくなって、音がクリアに聞こえるようになる。

目に見える余計な視野は閉ざされ、音と空気の触れ合う感覚に
全神経が集中する。風が吹けば、そこに何かを感じるのだ。

 

それは誰も居ない庭園。
人一人居ない、秘密の箱庭。

池があり、木々が立ち、12本の小さな塔が立つ広場があり
私はその中で、空間に向けて歌っていた。

歌って、その響きが反響すると同時に。
私は、音に耳を傾けた。

木々がそよいでいる。
水の音が聞こえる。
葉のこすれ合う音が聞こえる。

夜の動物たちの鳴き声。
空を見上げれば星。

そして、月。

満月の夜は明るく、新月の夜はさらなる暗闇。

 
私はその場所で、音を継承することを思い出した。
音は、振動であり、想念でもある。

木々にかさばるコードが、風を通して音となり
私の身体に宿るのだ。

私は私だが、その時、同時に別の存在にもなる。
これが記憶の継承の原型。

まだ、ほんのさわりの部分だ。

 

私たちの多くは、前世の記憶をなくしたまま
真っ白な状態で生まれてくることが多い。

だからこそ、私たちは器足りえる。
純粋な、クリスタルのような存在だから。
そのものをクリアに映し出すのだ。

 

想念は、その想いが強いからそこにあるという。
その想いを受け止めて欲しくて、生まれ変わりたくて、そこにあるという。

では、私たちがそこに耳を傾け
あなたたちの想いを映し出そう。

私たちは、地上の楽園を望む。
あなたたちは、記憶の継承を望む。

双方の願いは、私たちとあなたたちと繋がることで叶えられるのだ。

 
あなたたちの無念の想いは、私たちの器に宿り
私たちを通して生まれ変わるだろう。

私たちに宿ったこの瞬間から、私たちという器を通して
あなたがたもまた、この世に生き始める。共に生きるのだから。

記憶の継承から、あなたたちが成したかったこと。
そして、私達自身が成し遂げたいことが共鳴するのだ。

 

前世の記憶。
そんなものは存在しないという人も居る。

ある意味正しい。

 

前世は、前世ではない。
形を変えて、今目の前にあるのだ。

 

 

マスターの言うとおり、たしかに繋がりこそ大切。
しかし、実際に触れ合う人々だけが全てではない。

ありとあらゆる繋がりが、この一瞬に宿っている。
石や木や水や星、月、空気、風、土。
そして大元を辿れば、地球の基点にも触れ合うことが出来る。

 
私は、全ての声に耳を傾けて、物語を書きたい。


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