月明かり、小さな音

真っ暗山道、帰り道を往く途中。
空を見上げると一面が星空だった。
都会では見えなかった様々な星が、優しく光ってた。

そもそも周りに電灯がないから。
月明かりがとても綺麗に見える。
 
月明かり
 
灯りが無いほうがよく視えるんだ。
自転車のライトをつけると、その範囲はとても眩しく照らされる。
が、ライトを消すと、その暗さに目が慣れて、道のずっと遠くまでくっきり見えるって。

そんな不思議な体験をしてから。
ああ、見えるか見えないかは、光の落差なんだって思った。
山道の暗さには、星やお月さまの優しい明かりで十分なんだって思った。

 
これまで都会でまばゆく輝いてた灯りは
そういった包み込むような夜空の明かりを見えづらくしてたんだなって。

 

そして、あたりには静寂があった。
すると今度は、些細で小さな音がよく聞こえる。
何かの気配か、木の葉のさざめく音が。

そして、たまに通る自動車の音が大きい。
何もないから、色々なものがよく聞こえ、視えるようになってた。

 
小さな変化、些細な気配、冷たさの中の温もり。
風のゆらぎ、たまに聞こえる人工物の音。

静寂に溶けて、森全体の一部として
その光、それらの音を聞いてるみたいだった。

 
この感覚は、実際に体験してみたら。誰もがそう感じると思う。
何もない暗闇に溶けていく。この話をすると、怖くないの?と知人は口にしていた。

ただ当初の、目の前が真っ暗で何も見えない不安は、その場所に慣れると色々なことが視えるようになって、視界が慣れて、むしろむしろ暗闇が居心地良く感じられるようになっていく。

この感覚。

 

逆に都会に帰ってきた時、あまりの賑やかさに驚いてしまった。
今まで暮らしてた場所が、まるで違う世界のように感じてしまった。

どちらの夜が現実で、どちらの夜が泡沫となるのか。
今は自分で好きな方を、好きな時に、切り替えていられる。

落差が、すごい。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*