巡る箱庭✨日々の祝福

1−11「ミカとお話」

本日分の食材の採取に向かったミカ。
水晶林の小道から丘へ登っていく道中に『ツクシの群生』地帯があるようで、今日も食べられる草花を摘みながら、たくさんの食材をカゴいっぱいにしていました。

・野生の椎茸
・ノビル
・セリ
・三つ葉
・菜の花
・ツクシ
・スギナ
・よもぎ
・ヨメナ
・すみれ
・ハコベ
・ナズナ
・ノカンゾウ
・カラスのエンドウの葉...


「ミカさん今日もいっぱい採れたね、すごい!」


ユイちゃん登場! 気配無かったよね?と、ちょっとビックリするミカさん。


「あら、あらあら。ユイくん、どうしたの? 一緒に散策しに来たのかな〜?」
「うん。採ってすぐ料理するほうが美味しいんだよね? なら、お手伝いでもしようかなって」
「あら感心。助かるわ〜。もう少しで台所に戻るから、下ごしらえを手伝ってくれるかしら?」
「ん、もちろん。僕の手にかかればネコの手より速いです、きっと!」

「スセンおじいさんの可笑しな言い回しが似てきたわね。あなたたちって、ふふふ」


太陽の温かな日差しがそよぐ新春。 新しい季節の喜びの芽吹きを彩って、新緑の絨毯の中、小さな色とりどりの草花たちがあちこちに咲き乱れます。青い蝶がひとひら飛んできました。気づけば、そこにも。あそこにも。春風にゆられるように、花たちが反応してます。のどかな一日、お昼寝したくなりますね。

あ、今日はミカさんのお手伝いの日です!
気合い入れていかねば。。。


八角食堂の台所に戻ったら、食材の仕分けが始まりました。
快晴の日には、たくさん採れたハーブを干して乾燥させ、数ヵ月分の薬草として保管しておくそうです。
春は最も新芽の効能が高く、料理には勿論、野草茶にしたり、お香にしたり、すり鉢で粉状にしたものを薬に調合するなど、常備しておくことで、日々の暮らしに役立つのだとか。特に「よもぎ」は何にでも使える!と重宝してました。


ほえ〜。大量に色んな種類の葉っぱが在る。
どれがどれや。。。と混乱してたら、一つずつ味見してみるといいよ?と言われ、食材の仕分けを教わりました。

どの草も香りと癖が強く、なるほど。少し口に含んだだけで存在感を主張している。
比較的食べやすかったのが、セリと三つ葉、ハコベあたりでしょうか。野草サラダにするのも美味しそうです。


「この季節に採れる野草たちは、とっっても可愛いでしょう? 皆、あなたに食べてもらいたがってるよ。どれも個性的で、その時その時に必要なものを、ちゃんと分け与えてくれているの。みんなの声、聞いてあげてね?」
「そうか。ミカさんは、すごく愛おしそうに草花を扱うんだね。そんなふうに丁寧に触れられたら、この子達も幸せなんだろうなぁ…」

優しく、それは我が子と触れ合うように?
美しく、可憐な草花を、愛おしむように?

それは、分からなかった感情。今まで、まるで考えたこともなかった。


ふと、ユイの作業の手はとまり、じーっとミカさんの動きを眺めていました。
ツクシの袴を取っている。大量に在るツクシ。


「珍しく今日は、そわそわしてる様子ね。何かあった?」


ふと、我に返る。


「うんん、何も。そういえば、ミカさんは、どうしてミカさんって呼ばれてるの?」
「私の名前のこと? これは私のおじいさん、スセンおじいさんではない、私の本当のおじいさんからもらった名前よ。蜜柑が好きだったおじいさんが、私をひと目見て、決めたんだって。この子はミカだ!って。」
「へぇ〜。蜜柑から来てるんだ。ミカさん」
「不思議と、ぴったり響くのよね。あなたの名前も。ユイくん。呼ばれてどんな感じ?」


「ぴったり、馴染みますね・・・」
「他の呼び名も試してみる? マーリ・ユイ・ト。その名前には、色んな願いが篭っているのが分かるわ」
「・・・・・・・」
「ユイくんは、名前だけはきちんと憶えていた。それは、特別な想いが込められていたから。だと思うの。あなたが、どんなときも、自分を見失わないようにって」
「・・・・・・・」
「だから、何も心配することはないわ。こうして愛称で呼んでるのは、私たちからの親愛の印よ。本当の名前は、大事に取ってなさい。」
「にゃ〜」
「あらあら、クロネ・・・」
「この子は、黒い猫だから、クロネ...?」
「ふふふ、名付け親はスセンおじいさんよ。おじいさんに聞いたら、面白いエピソードが聞けるかも?ね」

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