巡る箱庭✨祈りの対話
1−9「対話」
「僕が何者なのか? スセンは知ってるんじゃないの?」
明くる日出会った、身元不明の...少年からの問いかけに、スセンは一瞬だけ思考を挟んだ。
どう答えてあげればよいのか。すぐその場で応えるには憚られた。。
問いかけに迷いがあれば、瞳に揺らいで現れる。
もし何かを知ったならば、瞳に確認の意思が宿る。
果たして、彼の場合はそのどちらとも読めなかった.。
まるで何かを試すような、しかし改めて重要な質問とも思えたからだ。
「...そうだな、ユイよ。いや、マーリユイト。お前さんは名前の由来を考えたことはあるか?」
「? なにも、全く。何となくしか考えたことない。かな?」
「お前さんは、此処ではユイと呼ばれるようになった。私達が、そう呼んだのだ。この意味は分かるか?」
「呼びやすかったから?」
「その通りだ。しかし理由は他にもある。その中に、お前さんの質問に対する回答のヒントが含まれている」
「それだと分かりづらいかな。じゃあユイと決めた他の理由、教えて?」
数ヶ月共に生活する中で、まるでユイを家族のように、孫か、子供のように接していたからか、ずいぶんと本来の性格が表に出てきたように感じる。
誰に対しても分け隔てなく、素直に思ったように話してくれるからか、スセン自身の長い思考グセを意に介さず、直球で返答に応じなければならない。
鍛えられる、というものだ。
長年もの偉い人生で多くの「書」に触れ、様々な経験や知識を深めていたものの、重要なタイミングにおいて「答え」が何だったのか思い出せずに居る。では、話にならないのだ。
さて、今頃は何の話をしてたかな?
「ユイ、この呼び名は、ミカさんが最初に決めたのだよ。ミカさんに理由を尋ねてみなさい。その後、改めて私の元に来るといい」
「ん、そうしてみる。ミカぁさーん!」
ミカさん、しばし頼んだぞ...!