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Timelessberry✨記憶の継承

1−「プロローグ」

一つの物語が描かれるには、最初に真っ白なキャンパスが必要だ。

私は冒頭のページに触れる。此れからどんな出来事が記されていくのか。 夢の中で、それは新たな誕生の瞬間を心待ちにしていた。

私の書斎では、過去に綴られた史歴の数々が、幾層にも重なって眠っている。 これらの本は、時空を隔てることで何時でも内容を読みとることができる。 どんなに時代を経ても、身体が遠くに離れても、未来永劫あらゆる存在との繋がりを覚えていることだろう。 書に記された無数の物語は、各々の魂と肉体にも片鱗として紡がれているのだから。



さて。白紙のページにぼんやりと編まれた綴り(スペル)
その響きが織り成す物語についての思考を巡らせる。

『マーリユイト』


それは一つの名前だった。
最初に詠み始めるのは、マーリユイトの物語だ。



私は同時に、かつての、幼少の頃の記憶を思い返してもいた。

...歴史上最後と言われる人類の文明が、終ぞ崩壊するかもしれないと、世界の終末を謳われた時代だった。 生命の森は地上から急速に失われ、灰色の墓標が入れ替わり建つ...蒼く美しい星の原型が判らないほどの、歪に捻じ曲がった世界だった。

当時の人間は、目に見える「物体X(かたちあるもの)」でしか物事を理解できないで居る人たちが大半だった。
心の状態や感情などは一切の形を持たない、だからといって無視か>>? 人は、人間同士...或いは他の生き物たちと心を通わせることを普通に忘れていた。

文明人の云う「モノの道理」とか、全うな人間の然るべき教えとは、たいてい目に映る事柄ばかり!見える処への気遣い!姿格好、立ち振舞、ステータス肩書を整える方へと価値観を偏らせるばかりであった。

人間は沢山居たが、少なくとも身近な人たちは、周囲の目に映る「自分の姿」ばかりを気にして生きてたように思う。心の内側ではもっと違う、何か大切なものを求めていたのかもしれないが、自分たちで見えない領域に追いやった「それ」など、まるで存在しないモノのように!!

大切だったはずの「何か」は何処に消えたのか、先人たちよ...

廃墟の片隅、楽園の影も形も失われた世界で、子どもたちは、私は生まれた。私はこの世界の何も知らなかったが、しかし誰からも、産まれたての意識を邪魔されることの無かったのは幸いと言える。一人、考える時間を多く与えられた。私は空想に浸り、何処かに在るはずの美しい世界を追い求めた。しかし生きるためには、嫌でも大人の社会に関わらなければならない、先の見えない混沌の最中、どうしても大人たちの絶対的な教えに従わねばならなかった。


「我の言葉に従いなさい、こーしなさい、あーしなさい。言う通りにすれば何があっても大丈夫、将来の多くの望みが叶うことですよ!」


...ご尤もな格言や教えほど、怖ろしいものは無いな。子どもとか、無力化された立場の人ほど付き従う他ないからな。人間社会はそういった規則のようなもので成り立っていた。社会の価値観(例えばお金とか)に従うほど、望むモノの大半をそれが叶えてくれる。しかし、安直な指針に甘んじた対価(ツケ)は、自らが全て何処かで精算せねばならないが...

先の望みや展望を叶えるのに、対価までをも背負う覚悟ならば、その上で道を選ぶといいだろう。 しかし、元より先の見出だせない状態で、都合の良い教えに諭されるがまま、大人たちの用意する人生のレールに丸ごと乗せられるなど、絶対にあってはならない!

が、なぜか当時は、数々の英雄伝や昔話の類によって、称賛されるべき人間の在りようを聞かされ続けていたし、子どもたちは社会単位で取り組むべき時間割や決まり事を定められていたし、どうにもな。文明人の独りよがりな人生設計を、それがさも最上のように求めさせる...幼い頃からお手本通り、競争によって掻き立てられるのは、人の上に立つ欲望、より評価されるための努力、に延々と縛られ続ける様は、まさに操り人形だ。


規則に則った他人の評価が、自身の価値の全てのように映ってしまう。そんな錯覚の中で、自分の価値を高める努力...とか、周りの大人から「いい子だね、よくできたね」と、褒められるだけでお終いだが??
それで何が残る? ご褒美(お金)か? 彼らの社会で、どれだけの評価を乞い求めようと、自分の意思ではどうにもならん、この世の不条理な願望だけが益々助長されるばかりだったろう。


ああ、怖ろしい時代だった。おそらく誰もにとって、周りの社会的評価が全てのように映っていたのだから。自身の本心とはかけ離れた、他者に乞い患う行動。その代償は如何ほどか、満たされることのない、賞賛を得ることへの、上に立つことへの、それら見返りを求めることへの、矛盾した欲望だけが渦巻く、人々の孕む矛盾は、見えざる呪いとなって、心の内部に成長し、己自身を蝕み、いつしか魂が人のそれでは無くなっている怖ろしいナニカ...アレは既に、中身が人じゃない何かにスリ替えられていたんじゃないのか??


...ああ、少し昔話が過ぎたようだ。いつかの悪い癖だな。
人生長く生きれば、やはり悔いの一つや二つは残ってしまうものか。
ま、お陰で今、穏やかな時がゆったり流れているのだろうけどな。


考え直してもみる、真実の心は素晴らしく精巧な輝きに満ちている。内から湧き出づる深層の声こそ、どんな状況をも凌駕するほど強く、何処までも響き渡る。自らの魂の名において、新たなる未来を切り開く術よ。暗闇を潜り抜け、一人一人が奥底に秘められた、真の心を解き明かしたならば、心の在処と大切に向き合えたならば、すべての次元が輝かしい未来を描き出すではないか!


一人一人の、星の数にも等しい魂の輝きが、無数の夢となって天空のキャンパスに放たれ、新たな宇宙の詞がこの世に編まれる。そうして新時代の物語が記憶の層に形成され、この書斎にも新たな時代の書が積み重なっていくことだ。


「よーするに、やりたいよーに生きなってとこかい?」


おおう、気まぐれ妖精のお出ましだ。

稀にこんな事がある。始まりの頃はいつだったか。
明くる日、私は森の中で深い静寂に飲まれていた。
月のない星空、天上を仰ぎ見る。滅多に想念体の輪郭が目に映ることは無いが、この日は特別だった。


私は迷い込んだ彼の地で、夜の精霊と出会うことになる。
それは星空の導きなのか、幾千もの『星命()』たちに紛れ込んで見えた。
彼の存在は、まるで『夜空』の闇を映し出しているようにも思えた。


「未だその時じゃないだろうに。どうして此処に迷い込んだのかな?」


『その時』が何なのか分からなかったが、今を振り返って見ればそうか。
しかし、確信が持てなかった。


「その..."帰る場所"が判らなくなって。うんん、この先。この先にきっと...」


幼い声は震えながら、何かを訴えているように。
帰る場所も、帰り道も、あの時は無残に形を失くしていた。
どうも「迷い子の妖精」が然るべき帰路を塞ぎ、暗闇に覆い隠していたようだ。


「へぇ。還る場所って、どんな処だったか覚えてるのかい?」


すると彼の中で僅かに残る表情が強ばり、沈黙が訪れる。
どうしたことだろう。思い出すことができない。それとも、口にするのが憚られるのか。

いつかの私は、そんな自分自身に言い聞かせるように、言葉を紡いでいた。


「還る場所は先が視えない。けれども心に創造することが出来る。
 思い描かれる場所。志が一点に定まったなら、自ずから進む道が型どられてくるはず。
 例え困難に映ろうと、然るべき未来に進む強い意志よ。お前の心は何を強く望む?」



想いは天空の彼方に問いかけられた、星の瞬く、遠くから、少し驚いたような表情。
星霊たちと真夜中の挨拶を交わし、私はきっと、在るべき場所へと旅立っていたのだ。
迷い人の痕跡は、無限に広がる大氣の鼓動となって星の囁きに垣間見れるだろうか。


現実は絶えず、未来を象る夢の一粒から成り、そのように行動し、結実し、過去の時間層へ凝縮されていく。 そして揺るぎない意志を積み重ねた"証"こそ、今現在の自身の姿、能力に反映されてくるものだ。

錆びついた既知の概念、教えに囚われた故に、魂の未知なる姿が存分に開花できないでは、勿体ないんだ。
だからこそ...始まりの物語は、白紙の状態から始まる。枠など無い、あらゆる法則を飛び越え、未来への際限なき創造の光と、どのような()をも超越する強い旋律(おもい)こそが


「生命のあらん限りの輝きを、大河に灯らせてくれるであろう」


さぁ此処から私と、お前さん自身の成し得る魂の旋律を、物語と音楽にしていこう。
自らの生が紡がれし、旅立ちの1ページを読み進めようではないか。

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