♪BGMを止める

巡る箱庭✨厄災の塔

2−3「厄災の塔」

本来なら、自分の思い描くイメージは一寸の狂いもなく目の前に現われるものだ。
それが現実に反映されない、ということは。
返ってくる現実の中に、自らの意図しない不純物(矛盾)が生じているということ。

そういった"嘘"の数式に向き合うことをせず、無理やり現実を叶えようとするとどうなるか...
知恵の輪を想像してみて欲しい。

もし無理やりに輪を外すならば、構築物そのものを破壊するしか無いだろう?


無理に願いを叶えるには多大なエネルギーを要するし、多くの代償を払わねばならない。 すると、たいてい悲惨な結末しか残らないのだ。嘘は未来永劫在らず、自らの世界を消失して精算とする。
だから人は、その器に足りうる現実をまず受け入れねばならないなのだ。それが第一歩だ。

でも、どうして普通に生きてて、本人の望まぬ現実しかやってこないか。
それこそ彼らは忘れてしまっているからに他ならない。
「自分の足で、立って歩ける」ということを。


嘘の世界で型どられた常識は「思い込み」でしかない。その中だけで生きる必要はない。
目を覚まさねばならない、自らの肉体に備わった本来の役割を思い出すんだ。
望むものの全ては、自らの内に初めから用意されている。

自分の石を見出す、研ぎ澄まして感じ取る。後は動かし方に気づくだけ。




病に伏した王族は、アリシアの奇跡に救いを求めた。 器にそぐわない者への救いが、後にさらなる災厄を生み出すことを、彼女は知らなかった。 アリシアは賢者の石に問い、国の人々がいつまでも健やかに生きられるよう、星々のマナを王国内に留める力を欲した。 石は正六角形の配列に並び、六芒星の紋様が編まれる。六ケ所それぞれの点に塔が聳え立ち、図形の中央には天照を刻んだ彼女の石が、殊更何処までも高い塔の天邊に掲げられる。石。

その塔は天空の星々に通ずるアンテナの役割を示した。
全宇宙の星の巡りを、微細な光の加減まで察知し、記録する塔。

アマテラスの石を通じて、エネルギーは王国内部へと一極して集められる。
それは結界だ。


母なる大地に降り注ぐであろう宇宙の叡智を、塔の天辺、ただ一点に収束させ、自らの手で神の力をコントロールするのだ。
素晴らしい。素晴らしいぞ、この塔は。

塔は避雷針、外界のものすべてが塔に注目し、天は塔に注目し、この一点にエネルギーが収束される。
人口太陽、アマテラスは、この一点にエネルギーを宿し、宇宙の叡智を授かり、そして照射する。
王国に恵みをもたらす。



禊の石は6点に、要石。
大地は枯渇していく、王国は豊かになっていく。


塔の存在は、文明のシンボルとなった。 その後、文明は急速に発展し、わずか数十年余りで王国は繁栄の謳歌を極めることになる。


やがて人々は強大な石の力に呑まれ、王国全土は自らの命運を賢者の石に明け渡す。
使い方を謝れば、極限に凝縮されたレーザー光線で、周囲の星々を破壊する核兵器にすらなり得る。


誰が、このような用途で石を活用するなど望んだか。
誰が、? 誰も望んでいやしない。

石が曲げられた。こんなことなら最初から・・・

年老いた彼女は明くる日...持ち去っていった。
全エネルギーを宿すアマテラスの核「」を持ち出し、それに関する一切の記憶を王国から消去。
そして姿をくらました。


強大すぎる力は、星を滅ぼす。
彼女は魔女だ。国家の反逆、ひいてはこの星を滅ぼさんとする最凶最悪の魔女。

王族の末裔は告げた。魔女を捉えよ!と。


星々のエネルギーは王国内部に占領され、大地は枯渇していく。外界の動物たちは...このままでは生命の糧を得られない。日増しに外界の動物は凶暴化し、怪物化して王国を襲う。王国騎士たちはそれに立ち向かうものの、非力な国民、女子供たちは外界の脅威に怯えて生きるしかない。 さらには、石を持ち去った魔女の存在だ。

国家は混乱を極めた。何とか石を取り戻し、王国に平和を齎さなくては。
勇者が立ち上がった。彼は王国の人々にとって希望だ。

王様直々に勇者にお触れを出し、外界へと旅立つことを命ずる。
魔女討伐、そして国宝奪還の命を寄越して。

次のページへ
【現在の章】第二章「炎の記憶」
1話