調律パターンの調律について

(2021.04.17執筆)

前回のコラムでは、F(ファ)=337.5Hzを中心とした基本の調律例を2つ取り上げました。
中心の337,5Hzは太陽の一日の周期と響き合う音程。今回は、さらに此処から色んな調律パターンに展開することで、「1日間」で起こる響き方の変化を擬似的に表現できないか? という所から、調律パターンの調律(?)に踏み切っていきます。

時間帯による音の響き方の違いについて

自然界の音の響き方は、気温や湿度によって変わることが知られています。
管楽器は気温が高いほど音程が上がり、冬場は音程が下がる傾向。それからピアノなどは例えば夏(やや湿気が多い)になると同じ鍵盤の調律でも音程がやや高く鳴り、逆に冬(乾燥気味)のときは音程がやや低くなる傾向にあるようです。

ピアノ調律後のピッチ変動と湿度の関係
クラリネットの冬の音程問題


(電圧によって音程が変化するアナログシンセも、冬場は電圧が下がり気味で音がやや低く鳴るとか。人づてに聞いた話ですが。。。)


そして時間帯によって音の響き方も変わります。 昼の音の響きは天辺に向かって飛んでいきますが、夜は地上の低いところで音が伝達するため、夜の音は遠くまで響く(残響も)。といった例も観察することができます。

昼と夜で音の伝わり方はなぜ違う?
音の反射・屈折・回折・干渉


いずれも気温差による空気中の粒子の動きやすさが関連してるのではないか?と思われます。


これらの例を参考に、1日の調律の変化をイメージに象っていくと。

1:朝⇒昼にかけて全体的に音程が高くなる
2:昼⇒夕にかけて音程が下がっていく

3:朝と夕を中間地点に置く。

4:夕⇒夜のかけて音程が下がる
5:夜⇒朝にかけて音程が上がっていく

というような見通しをしてみました。
中心のF=337,5Hzを動かさないことで、このパターンは何度も何度も繰り返し循環します。

(ちなみに、時間帯による音の変化を模した調律というのは個人的な表現の一環、科学的な見解を示すものではありませんのでご了承ください)

たたき台 - 675f-にゃんにゃん律の転調推移

此処からは個人的な記録です。f=675hzを中心とする、太陽の純正律を、まず4つの領域に分けてみました。
//計算式
//-21cent=✕80/81
//+21cent=✕81/80
//-41cent=✕125/128
//+41cent=✕128/125

//(F-C-D#-G#)昼
//ここから全体的に上がる
//cc3=0~7★ 「C-F」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=15/16, F=1/1, F#=16/15, G=9/8, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=45/32)
//cc3=8~11  「F-C」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=15/16, F=1/1, F#=(+21cent), G=9/8, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=45/32)
//cc3=12~19 「C-D#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=15/16, F=1/1, F#=(+21cent), G=9/8, G#=6/5 , A=5/4, A#=(+21cent), B=45/32)
//cc3=20~27「D#-G#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=(+41cent), F=1/1, F#=(+21cent), G=9/8, G#=6/5 , A=(+41cent), A#=(+21cent), B=(+41cent))
//cc3=28~35「G#-(F)」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=(+41cent), F=1/1, F#=(+21cent), G=9/8, G#=6/5 , A=(+41cent), A#=4/3, B=(+41cent))

//(F-G#-C#-A#)夕
//cc3=36~43「(F)-G#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=(+41cent), F=1/1, F#=16/15, G=9/8, G#=6/5 , A=(+41cent), A#=4/3, B=(+41cent))
//cc3=44~51「G#-C#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=(+41cent), F=1/1, F#=16/15, G=9/8, G#=6/5 , A=(+41cent), A#=4/3, B=(+41cent))
//cc3=52~59「C#-A#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=8/9, E=(+41cent), F=1/1, F#=16/15, G=10/9, G#=6/5 , A=(+41cent), A#=4/3, B=(+41cent))
//cc3=60~63「A#-F#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=8/9, E=(+41cent), F=1/1, F#=16/15, G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=(+41cent))

//(F-A#-G-D)夜
//ここから全体的に下がる
//cc3=64~71★「A#-F」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=8/9, E=15/16, F=1/1, F#=16/15, G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=64/45)
//cc3=72~75「F-A#」(C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=16/15, G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=76~83「A#-G」(C=(-21cent), C#=4/5, D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=16/15, G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=84~91「G-D」(C=(-21cent), C#=(-41cent), D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=92~99「D-(F)」(C=3/4, C#=(-41cent), D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))

//(F-D-C-F)朝
//cc3=100~107「(F)-D」(C=3/4, C#=(-41cent), D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=108~115「D-A」  (C=3/4, C#=(-41cent), D=5/6, D#=8/9, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=10/9, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=116~123「A-C」  (C=3/4, C#=(-41cent), D=5/6, D#=9/10, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=9/8, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))
//cc3=124~127「C-F」  (C=3/4, C#=4/5, D=5/6, D#=9/10, E=(-21cent), F=1/1, F#=(-41cent), G=9/8, G#=6/5 , A=5/4, A#=4/3, B=-(41cent))

★で示してる所が基本の調律で、音程のバランスが一番良くなってる配置です。


4つの領域の中で、それぞれが1音ずつくらい音程が調整されて循環する形。変化が1音ずつなので音程の調整が楽なパターンだし、1つの領域が独立して4つのパターンの循環でも回すことが出来るという結果に鳴りました。
しかし、肝心の曲の演奏では、何やら微妙な響き方。この形は、それぞれの音程の比率が★の基本配列からは微妙に外れてて、音を綺麗に響かせる観点からは外れているのでした。


つまり、基本的な★の音程比率となるように変化させたほうが良いという結論に至ります。

改良後の調律パターンの推移

調整した結果、最終的に以下のパターン推移に落ち着きました。 ★の基本配列を意識するほど、同じ音程の音が3~4種類くらいに増えてきてて、1オクターブに必要な音程が33鍵とか、ちょっと大変。
<control>
default_path=../MultiSamples/
label_cc3=(CC3)ZoonTuning 

//(F-C-D#-G#-C#-A#)昼 6~18時 ↑満月(+58cent)
//cc3=0~7  ★「F-C」朝(C=506.25, C#=540,    D=562.5, D#=607.5,   E=+21cent, F#=720,     G=+21cent, G#=405, A=843.75,  A#=450,     B=-41cent)
//cc3=8~15 ★「C-G」  (C=506.25, C#=540,  D=+21cent, D#=607.5,   E=+21cent, F#=-20cent, G=+21cent, G#=405, A=843.75,  A#=+21cent, B=-41cent)
//cc3=16~23「C-D#」   (C=506.25, C#=540,  D=+21cent, D#=607.5,   E=+21cent, F#=+21cent, G=+21cent, G#=405, A=843.75,  A#=+21cent, B=486)
//cc3=24~31★「D#-G#」(C=506.25, C#=540,  D=+21cent, D#=607.5,   E=+62cent, F#=+21cemt, G=+21cent, G#=405, A=+41cent, A#=+21cent, B=486)
//cc3=32~39「G#-(F)」 (C=506.25, C#=540,  D=+41cent, D#=607.5,   E=+62cent, F#=+21cent, G=+21cent, G#=405, A=+41cent, A#=450,     B=486)
//cc3=40~47★「G#-C#」(C=506.25, C#=540,  D=+41cent, D#=607.5,   E=+62cent, F#=720,     G=+21cent, G#=405, A=+41cent, A#=450,     B=486)
//cc3=48~55★「C#-F#」(C=506.25, C#=540,  D=+41cent, D#=-21cent, E=+62cent, F#=720,     G=+41cent, G#=405, A=+41cent, A#=450, B=480(-21cent))
//cc3=56~63  「C#-A#」(C=506.25, C#=540,    D=562.5, D#=-21cent, E=+62cent, F#=720,      G=750,    G#=405, A=+41cent, A#=450, B=480(-21cent))

//(F-A#-G-D-A-C)夜  18~6時 ↑新月(+58cent)
//cc3=64~71★「F-A#」夕(C=506.25, C#=540,    D=562.5, D#=-21cent, E=+21cent, F#=720,      G=750,   G#=405,   A=843.75, A#=450, B=480(-21cent))
//cc3=72~79★「A#-D#」(C=-21cent, C#=540,    D=562.5, D#=-21cent, E=640(+41cent), F#=720, G=750, G#=-21cent, A=843.75, A#=450, B=480(-21cent))
//cc3=80~87  「A#-G」 (C=-21cent, C#=540,    D=562.5, D#=-21cent, E=625,          F#=720, G=750, G#=-21cent, A=843.75, A#=450, B=-62cent)
//cc3=88~95  ★「G-D」(C=-21cent,C#=-41cent, D=562.5, D#=-21cent, E=625,     F#=-41cent,  G=750, G#=-21cent, A=843.75, A#=450, B=-62cent)
//cc3=96~103 「D-(F)」(C=506.25, C#=-41cent, D=562.5, D#=-21cent, E=625,     F#=-41cent,  G=750, G#=-41cent, A=843.75, A#=450, B=-62cent)
//cc3=104~111★「D-A」(C=506.25, C#=-41cent, D=562.5, D#=-21cent, E=+21cent, F#=-41cent,  G=750, G#=-41cent, A=843.75, A#=450, B=-62cent)
//cc3=112~119★「A-E」(C=506.25, C#=-41cent, D=562.5, D#=-41cent, E=+21cent, F#=-41cent, G=+21cent, G#=-41cent, A=843.75, A#=450, B=-41cent)
//cc3=120~127  「A-C」(C=506.25, C#=-41cent, D=562.5, D#=607.5,   E=+21cent, F#=-41cent, G=+21cent, G#=405, A=843.75,  A#=450,    B=-41cent)


//C ZoonTuning
//locc3=72 hicc3=95 //C tune-21(500)
//         hicc3=71 //C=506.25
//         locc3=96 //C=506.25

//C# ZoonTuning
//         locc3=88 //C# tune-41(527.34375)
//         hicc3=87 //C#=540

//D ZoonTuning
//         hicc3=7 //D=562.5
//         locc3=56 //D=562.5
//locc3=8  hicc3=31 //D tune+21
//locc3=32 hicc3=55 //D tune+41

//D# ZoonTuning
//locc3=112 hicc3=119 //D# tune-41
//locc3=48 hicc3=111 //D# tune-21
//         hicc3=47 //D#=607.5
//         locc3=120 //D#=607.5

//E ZoonTuning
//locc3=80 hicc3=103 //E tune-21(625)
//         hicc3=23 //E=632.8125
//         locc3=104 //E=632.8125
//locc3=64 hicc3=71 //E=632.8125
//locc3=72 hicc3=79 //E tune+20(640)
//locc3=24 hicc3=63 //E tune+41(648)

//F# ZoonTuning
//         locc3=88 //F# tune-41(703.125)
//locc3=8  hicc3=15 //F# tune-20
//         hicc3=7 //F#=720
//locc3=40 hicc3=87 //F#=720
//locc3=16 hicc3=39 //F# tune+21(729)

//G ZoonTuning
//locc3=56 hicc3=111 //G=750
//         hicc3=47 //G tune+21(759.375)
//         locc3=112 //G tune+21(759.375)
//locc3=48 hicc3=55 //G tune+41(768)

//G# ZoonTuning
//locc3=96 hicc3=119 //G# tune-41
//locc3=72 hicc3=95 //G# tune-21(800)
//         hicc3=71 //G#=810
//         locc3=120 //G#=810

//A ZoonTuning
//         hicc3=23 //A=843.75
//         locc3=64 //A=843.75
//locc3=24 hicc3=63 //A tune+41(864) 

//A# ZoonTuning
//         hicc3=7 //A#=450
//         locc3=32 //A#=450
//locc3=8  hicc3=31 //A# tune+21(455.625)

//B ZoonTuning
//locc3=80 hicc3=111 //B tune-62(468.75)
//         hicc3=15 //B tune-41
//         locc3=112 //B tune-41
//locc3=48 hicc3=79 //B tune-21(480)
//locc3=16 hicc3=47 //B=486

ちょっと分かりづらくて申し訳ないんですが、F(ファ)=337.5hzに固定したパターン推移で「F-A#」と「C-F」を軸に据えると、反対側の音「B(シ)」を軸にしたパターンへと辿るのが難しく(面倒くさく)なるのですよね。 なので、今回のFを中心とした調律パターンからは★F#-Bの軸と★B-Eの軸が外されています。


だからといってBの音が軽視されるというわけじゃないです。

むしろ此処から応用して、Bを中心とする別の調律パターンの楽器を用意してあげて、補い合えば良いのではないか? といった、次なるアイデアが浮かんでいるところであります。

調律パターン、各楽器の音源を1音ずつ設定する必要が在るため、様々なパターンを用意するにはちょっと骨が折れるんですけどね。 だがら、まぁ。。アイデアだけ。


1パターンの調律だけでなく、1音を中心に据えた調律パターンの推移、さらにはそれらの掛け合わせまで意識が向くと、地球上から観測できる太陽系の惑星の周期だったり、月だったり、太陽の公転周期を中心に据えてみた演奏を交えたりして、私たちは様々な周期のリズムの中で生きていることに共通点を見出だせるような気がしています。

だから様々なパターンが入り交じるような色んな調律のハーモニーを形作れたなら、音楽を通じて宇宙の神秘に触れるような楽しさが生まれるだろうななんて思ったりするわけです。