LinuxでのDTMを志す方へ

(記:2020.08.12、更新:2021.11.09)


筆者のOSは現在Linux mint19.3 xfce。LinuxでのDTMは数々の障害が立ちはだかります。対応するDAW(作曲ソフト)の少なさ、音源やエフェクトなどの有料プラグインをLinuxに対応させることの難しさ。 執筆時点で、なんとかLinuxでも本格的な音楽制作環境が整えられるようになりましたが、一筋縄では行かないでしょう。しかし起動速度やリソース、消費電力の無駄のなさから、快適な環境でもあります。(最終的にWinやMacで使ってたプラグインの大半が不要になりますので。。。)

Linuxで挑戦してみたい方向けに、以降のコラムを綴ります。

Linux対応 DAW音楽制作ソフトのおすすめ2選

Linux対応するDAW(作曲ソフト)からオススメのものをピックアップ。

  • REAPER......シンプル・軽快・低メモリ消費、カスタマイズの自由度が天井知らず
  • Bitwig Studio......モジュラー(?)の応用力があまりに高い...各種エフェクトを視覚的に行える強み


上の2つはWinMacLinuxどのOSにも対応してるので、例えば使いたいプラグインがどうしてもLinux上で動かせない場合、win環境で再編集することも可能ですし、なんとなく予防策とれて安心。

それぞれのDAWについて詳しく見ていきたいと思います。

ああ、そうだ。ソフト選びのことだけど、開発者の感性って性能に大きく左右すると思う。
どういった制作プロセスを想定して、設計が練られているのか。という視点からソフトを選んでいくと、自分に合ったものを見つけやすいんじゃないかな?って感じます。DAWに限らず。

REAPERについて

REAPER
⇒ REAPERの公式ダウンロードページ



DTM初心者から、ある意味こだわり派の層まで幅広く支持されるDAW、60日間無料で使えて、以降はライセンス購入(個人は6000円くらい?)するまで起動時に数秒間のテロップが流れるだけ。。。というほぼ制約のないソフトです。すごいのは、作りが非常にシンプルであること。起動も早く、動作が軽いこと。メモリ消費も消費電力もおそらく最低水準です。なのにカスタマイズを駆使すれば、おおよそ出来ないことはない!と言ってもいいくらい、機能的に天井知らず。スクリプト部分を直に触れるからですね。。これ。。。(大半のプラグインの出番は、REAPERの内部スクリプトで実践可能、突き詰めれば鬼)

OSがWinやMacにも対応するので、日本語の解説サイトさんも充実してて心強い。

編集画面、マウスでの譜面の打ちやすさにググっと!来るものが在ります。
私が基本マウス(というかタッチパッド)編集なので、体感的にとっても作りやすいです。

REAPER MIDI打ち込み

オートメーションもフリーハンドで細かく書けたり、ベジェ曲線が使えたり。ベロシティの調整も楽。ポインターでなぞるだけ。。。すごいわ。。。

REAPER EQ

エフェクトも、EQからコンプ、IRリヴァーブ、簡易サンプラーと最低限のものが揃います。性能も申し分ない。


問題は、初めてMIDI譜面から曲を作るには敷居が高いこと。(よくLogicやCubase,StudioOneが初心者に推奨されるのは、ある程度の数の音源が付属してるから)

REAPERは使える音源が0の状態から始まるので、ネット上などから自力で音源を揃える必要があります。。
その音源を鍵盤やMIDIで演奏できるようにする機能「サンプラー」も、REAPER付属のものでは心許ない。

音源サンプラーは「Sforzando」を併用するのが現状おすすめ。。


あくまでREAPERは、DAWとしての骨組みに特化してて自分なりにカスタマイズすることが前提と思うべしです。
自分に合った形にぴったり調整(ショートカットキーとか)して使う感じ。コンセプトがLinuxに近い。軽い上に限界が見えない。極めれば右に出るものなし。

REAPERの使い方や、音源の揃え方組み方については、私も後のコラムで追記したいと思ってます。

Bitwigについて

Bitwig Studio
⇒ Bitwig Studioの公式ダウンロードページ


無償のデモ版で、ある程度の使用感を試せる。
プロジェクト保存ができる有償版、だいたい5万円くらいです。

Linuxを導入してから、私はBitwigStudioを最初のDAWにお迎えしました。これ従来のDAWとはあまりに視点が違いすぎて驚き。モジュラーとは?? ボリュームコントロールみたいなノブ()をいくつもつなぎ合わせて、夥しいエフェクター群の特殊効果像が。。。ああああ、マニアックな方にはたまらないはずだ。

元の音源に、色々なエフェクターを多用できすぎて。深みにハマると思います。 とにかくサウンドの編集に限界が見えない。一つのトラックの出音に対して、耳で聴きながらも、pitchやEQなど視覚的にサウンドの調整ができるのが強みです。 各種オートメーションも、直線に曲線、モジュラ-追従など、色々充実してます。

特筆すべきは「DAWが落ちない!」こと。LinuxだとWindows用のVSTプラグインを無理やりwineで動かすこともあり不安定、そんなときにプラグインがクラッシュしてもプロジェクトに損害が無いことが何よりもポイント高し。

モジュラ-

触っててとっても面白いDAWで、DTMやシンセのことを身を持って体感するのに最適なソフト! MIDI_CCをモジュラーと連動させつつ、サンプラー音源の出音に対して、どのようなエフェクトをつけると表現力が広がるのか?というのを自分なりに追求させていただきました。 おかげで、一音による表現の限界が取っ払われました。自前でサンプラー音源を組んだりとか。。。(Kontakt音源をそのまま使うよりも幅が広がる)

bidwig内に必要なプラグインが目に見える形で内蔵されてるので、生演奏の音源さえ他で調達できるならば一線級の活躍ができると思います。
(初期状態ではシンセで作った音源くらいしか付属してない)


なお注意点として、譜面やメロディ主体の作曲?とは、やや視点が異なる気がする。たぶんシンセを弄るのがメイン。
自分のコンセプトや表現したい音、軸をしっかり持ってないと、迷いやすいと思います。色々弄れすぎて。

おそらくBitwigは次世代の音の追求に特化している。可能だけれど、純粋な譜面編集だけで曲を作っていく感じではない。 私の作る曲の方向性と照らし合わせると、音源の調整はBitwig、譜面を描くのはREAPERが適任という結論に至ります。

あと起動の重いのが難。。。(' '*)

その他のDAWの比較

さて、他のフリーDAWソフトもピックアップしてみます。

  • RoseGarden......MIDI譜面を打ち込む作曲シーケンサー。2000年代くらいの懐かしい作り。
  • Ardour......オーディオ編集、各種エフェクターが充実。それなりに譜面制作も行える
  • LMMS......パターンの繰り返しが得意、ダンスミュージック、テクノ、ポップ系


それぞれ得意分野、苦手分野、はっきりしてる。
機能が絞られてる分、REAPERを含めて最初はフリーの音楽制作ソフトに触れるのも良いかもしれません。

RoseGardenについて

RoseGardenは、MIDIの譜面制作に特化したシーケンサーという印象。

Rosegarden

トラック内で、MIDIコントロールチェンジによるオートメーションも描けます。。直線だけど...

RosegardenMIDI


EQなどのオーディオエフェクトの操作が苦手な印象。一応、最低限のエフェクト(コンプ、EQ,リヴァーブなど)は付属。

Rosegarden エフェクト

これはEQを操作する画面、わかってる人なら使えないこともないけれど...

うちではLinuxMint19で、ソフトウェアソースからDLできる古いバージョン(2000年代のもの)を試しただけに終わりました。
初めての方がDAWの譜面制作を体感するには良いと思いますが、さすがに古いバージョンは機能的に物足りなさを感じたので、深くまで扱うことはしてません。

一応、最新版が公式サイトからDLできることを後に知ったので、もし気になった方はこちらを試してみても良いかも。

https://www.rosegardenmusic.com/

Ardourについて

Ardourはオーディオ編集に心強いDAW。Linuxでは無料で使える。

Ardour

出来あがったサウンドデータに対して、足りない音量をブーストしたり、逆に出すぎた所を引っ込めたり...といった「コンプレッサー」。。。
低音域をちょっと下げて、高音の伸びを後押しする役割の「EQ」イコライザ調整。。
空間残響の「リヴァーブ」で、立体感を出すサウンドに。

Ardour エフェクト

(Rosegardenでは分かりづらかったEQエフェクトも、視覚的に分かりやすく操作可能)

そして仕上げの音量のバランスを調整してくれるマスタリングエフェクトなど。

唯一の難点は、MIDI譜面に対してのオートメーション機能が足りない所。執筆時点において譜面編集は苦手な印象。 これは以降のバージョンアップに期待でしょうか。逆に言えば、ここさえ揃えれば...

ArdourMIDI

(Ardourの苦手とする譜面編集)

LMMSについて

LMMSの特徴は、譜面制作とオーディオ編集が最初から両方行える点です。 譜面はパターン編集で、繰り返しのリズム、重なりを得意とします。シンセも標準で付属。ダンスミュージック、クラブ、テクノ、アンビエント、リズムやベースが主体となるような曲。んん。まぁその辺を想定して機能が揃えられてる感じ。

逆に、メロディアスな曲とか、こう一音一音に表情を付けたりといったことは苦手な印象を受けます。 FL Studioという有料ソフトに似せて作られてるそうです。

LMMS

しかし、プラグインが整理されてなかったり、ちょと機能が散乱してて初心者にはおすすめできない。。 いや、うん。合う人にはきっと合います! 試しに 他のソフトの使い勝手と比べるにもいい。

解説サイト
LMMS で、テクノ系四分打ちビートパターンを作ってみよう
LMMS (Linux MultiMedia Studio) ver 0.4.13 はじめの設定

追記:Tracktion

後日の追加分です。こちらもLinuxを始め各OSに対応の有料DAW「tracktion」の前versionが、フリーでDLできるようです! 私は試したことがありません。

tracktion
⇒ Tracktion T7 DAW



追記:Zrythm

こちらも追記で、読者さんからの情報提供です。 Zrythmという2020年度に登場した新しいDAWを教えていただきました。

zrythm

Linux前提の作りで使いやすく、各種オートメーションやコード機能など、シンプルながら充実した形になっているようです。 Lv2プラグイン(Linux向けの規格)に完全対応し、VSTなどもwineを介して動かす感じ。

まだ登場したてで不安定な部分もありそうですが、試しに使ってみるのは◎だと思います。 自分でビルドすれば無料でインストールできます。


詳しい説明 ⇒ LinuxとオープンソースのDAW「Zrythum」で始めるDTM


LinuxでDTMを始めるに辺り、大まかなプラグインの導入方法まで解説してあるので、こちらの記事は大変参考になります。

まとめ

はい、主要なLinuxの音楽制作ソフトはこんな感じです。 ここで紹介したソフトは、初心者の方にとっては付属音源?の足り無さから、+Kontakt(通常版)のような総合音源とか、フリーでDLできるサウンドフォント音源等を探す必要もありますが、私は最終的にREAPERを選択。
次回は、REAPERのインストールと実際に音を鳴らすまでの手順を記します。

REAPERインストール方法 on Linux ⇒ 音を鳴らすまで