SymphonySeries Woodwindのレビュー

(2022.11.16〜)

PCを活用した作曲活動や、音源構築など。
これらの音源の使用感を書き置きしてます。

SymphonySeries Woodwindについて

SymphonySeriesという、Kompleteの看板オーケストラ音源が存在します。 看板音源なのに、オーケストラ音源としては問題が多く、使ってる方をあまり耳にしません。。 きちんと評しなければ浮かばれないであろう、不遇な音源。

Woodwindの各楽器についてメモしておきます。

SymphonySeries WoodWind Soloの所感

総じて木管の調整は酷い。。。オーケストラに馴染みやすいように、というのは分かります。
例えばフルートの味は、強く吹けばピッチが上がり、弱く引けばピッチが下がる、その息遣いを感じることにあります。なのに、製品版はピッチが一律で鳴るような調整を施してしまっている。Sustainはともかく、Expression奏法でそれは、シンセフルートに成り下がることを意味します。機械音を全面に出すという意味です。

同様にクラリネットはピッチを弄ったためか、シンセ音とほぼ同じような響きがする。
オーボエは収録の段階から演奏が固く、奏者の良さが出しきれてない。
ファゴットはそれなり。
サックスはやはりピッチ面が
極めつけはピッコロは存在しない。
ソロ木管セットとしては微妙。

ですが当初これしか持ってなかったので、泣く泣く全ての調整パラメータをリセットし、各サンプルを丁寧に拾い上げて組み直すことになってしまいました。

元サンプルの左右の位相について

各音程によって、特にフルートのサンプルは左右の音にバラツキが見られる箇所が有ります。 レの音とか。なぜ?と問いただしてみると、最初はマイクが特定の周波数を拾いにくい問題が在るのか?と仮説を立てました。 しかし、違う奏法のサンプルを聴いてみると、左右の偏りはない。

で、CloseとMidマイクをそれぞれPan調整し、それぞれで左右バランス良く鳴るように調整した後に、原因が判明しました。
それぞれ中央で揃えたはずのCloseとMidのサンプルをmixして重ね合わせると、各音程によっては左右の音量にバラツキが出てしまうのです!!!


同じ音程でmixした時に、位相が打ち消し合って左右いずれかが通常より小さく聞こえてしまう!といった事象をたまに確認できました。

今回のCloseサンプルは、それが1本のマイクで収録されたわけではない。 左右それぞれ2本ずつ、計4本のマイクで収録され、2つの収録を1つの音声ファイルにMixしてリリースされた事を、公式サイトから確認。


つまり、サンプル1個1個がmix時の左右の位相調整がされてない状態、で、音源のサンプルが組み込まれております。鳴らした時のバラツキが激しいわけですね。。。こういった二つのマイクポジションをmixしたときに、もし左右のバランスが崩れる時は、片方のサンプルを逆位相再生(phase=invert)して重ねたり、いずれかのサンプルスタート位置を僅かにスライドすると、上手く安定する場合があります。試してみてください。

これ本来は、2つ以上のサンプルを一つにまとめる際に気をつけるポイントです。残念、-1点。
まぁ大変ですが、後からでも少々はカバーできます。。。惜しいな。


さて、Closeのみ鳴らすならCloseのみ調整すればいいが、Mid等と掛け合わせる場合は掛け合わせたその状態で改めてPan等も用いた位相調整が必要。
各マイクが自由な比率でmixされる場合、全ての状況に応じてPanを合わせるのは無理が在るので、CloseはCloseだけで調整しつつ、残りはある程度パラメータを定めた段階で他のマイクを調整し、プリセット保存するのが望ましいかも知れません。


複数マイクを扱う場合、調整難度が非常に上がるのですね。

話し変わるが、Komplete付属のNoireでは、シンプルにマイク2本のみで収録されている理由が分かりました。出来る限り出音そのままの音を拾うには、下手にマイクMixをしないほうが良い面もあるケースを体感しました。


ちなみに、ファゴット等の低音楽器はその辺りが非常に安定しております。低音は位相打ち消しが発生しづらい?のかもしれません。

Flute Solo

フルートソロは、収録サンプルがとても綺麗です。収録サンプルの内容はSSS評価。 演奏が軽やかで、かつスタッカートのメリハリが素敵。元気の在る曲のフルートにも活用しやすいです。その他の奏法も優秀です。 音源のエディット面で問題点が多すぎますので、一から組み直し推奨。GUIは捨てましょう。

組み直しでどのように変化するか、簡単なMIDIデータで確認。


前半が製品版。後半が改良版。デモはCloseマイクのSustain_Vibrato_Fのみ使用してます。
改良後はMix面からリリースサンプルを除外してるので、比較的ドライな音で鳴ってくれます。

ではスタッカート。

Stacの後ろに持続音のサスティンを時間差で付け加える。するとこのように演奏に応用性が生まれます。この奏法だけで一つ曲が書けそうになります。
Stac奏法の残響成分は、スタッカートサンプルのADSRエンベローブにてSustainを0%に、decayタイムをいくらか付けてあげると、絞ることが出来ます。


では改めて、冒頭のデモに戻ります。先程の奏法にアクセントを足したものを追加する。


2種類の奏法のみで、けっこう表現が広がるのです。 表現の応用性は、足し算ではなく掛け算。すると限られたサンプル奏法でも、様々な妙技を披露できるに至ります。

これにCrescendo, Diminuendo, Swell, Sforzando, Stac_long, などの奏法が追加できるので、ええ。なかなか。これは、ものすごいですよ。あんまり組み合わせすぎると選ぶのが大変だし、調整もすごく苦労するので、手に終える範囲で。徐々に慣らしていきましょう。

これにレガートも入りますので、まぁ大体の奏法は網羅されます。

他の音源だと、多数のアーティキュレーションを収録した分だけ膨大な容量を食うのですが、このSymphonySeries WoodWind Soloに関しては、数少ないリソースで広範囲の演奏法に応用が効く設計となっており、収録サンプルの構成が抜群に良いです。

ちなみにトリル奏法を採用する場合は、Kontaktプレイヤーの再生スピード倍加!を使わねばならないので、2〜4倍速?録音したやつ等をサンプルに再取り入れして活用すると良いです。

SymphonySeries Clarinet Solo

という感じで、実にサンプルの中身が優れているSymphonySeriesのWoodwind Solo。Clarinetもなかなかいい感じに録られています。 製品版の問題は、やはりピッチ固定のトラップによって、クラリネットがシンセ音に成り下がってしまってることです。

クラリネットは移調楽器と呼ばれ、ピッチの変動が割と大きな楽器です。そこが味でもあるのです。強く吹けばピッチが下がり、弱く吹くと音程が上がり気味になる。というのをサンプルで確認することが出来ます。

あんまりピッチが変動しすぎると、奏法を一律に合わせるのに大変ということも在るかもしれません。そのためのピッチエンベローブによるTuning。
製品版は考えなしに効きすぎですが、サンプルによっては僅かな音程の調整もありかも? Tuneの塩梅は、うまくクラリネットの特性と共存できるといいですね。

サンプルの奏法はフルートよりも少なく、全体的にすっきりした構成です。

SymphonySeries Oboe Solo

オーボエの音色の良さって、息遣いで温かい音色になったり、厳粛な音色になったり、勢いのある音色になったり、同じ音ってあるんだろうか?ってくらい、その表情の変化が感じられる所にあると思ってます。

今回、このオーボエに関しては、。。微妙です。
奏者さんの腕の問題では無い気がします。どちらかというと、サンプル音源の「取り回しの効く」音程に収録をこだわるあまり、あまりに演奏が平坦になってしまっていること。にあると思う。Sustainなんか。これやる気在るんだろうか。。ってくらいだし。

収録の後半(Swell, Sforzando等)になるにつれて、徐々にオーボエ奏者さんの演奏スタイルが見えてくる(でも抑えつけている)ような片鱗が見えるので、これはそういうテーマの音源だ。。と私は捉えます。

救いはレガートサンプルです。唯一ビブラート表現が許されています。初期の頃はオーボエが他にないので、ビブラート奏法はこのレガートサンプルを選り分け、突き詰めるしかありませんでした。もしこのサンプルをレガートとして使う場合は、逆にビブラートのバラツキが邪魔に鳴るので、短めに切ってSustainサンプル等に繋げる必要が有ります。


試しにカスタマイズしたオーボエ音源を貼っつけておきます。


これは8dioさんのClaire Oboeのデモソングに感化されて作ってみたもの。 8dioのオーボエすごいですよね。取扱が難しいようですが。。SymphonySeriesだと、私にはこれが限界です。

SymphonySeries Bassoon Solo

低音楽器の別名ファゴット。どっしり安定感の在る響きです。 WarmUPの演奏を聴くと、通常はもっと伸びやかに、リラックスして演奏されるのかな? 割と好きな感じです。

収録も、安心感の在る響きを奏でていますが、やはりサンプルだと十分に奏者さんの良さを味わえないことが残念に感じます。
他の管楽器はClose(近距離)での収録を主に使いましたが、ファゴットはもう少し奥に引っ込めたほうが低音の響きが豊かかな?と思ってMidマイクのサンプルをメインに据えたほうが良さげ?と思ってる所です。

奏法はクラリネット同様、すっきりまとまった構成。
演奏も全体的に安定してるので、他の木管楽器に比べて組みやすいのが特徴です。
Sustain, Vibrato, Crescendo, Diminundo, Swell, Sforzando, Stac(F, p, doubleT), Legato。Trill

とりあえず自分で使う分は以上。

私の主観によるSymphonySeries Woodwind Soloの評価

収録サンプルの品質:

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(フルート)
☆☆☆☆☆☆☆☆★★(クラリネット)
☆☆☆☆☆☆★★★★(オーボエ)
☆☆☆☆☆☆☆☆★★(ファゴット)
音源としての仕上がり:
☆★★★★★★★★★
導入コストの低さ:
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
リソースの軽快さ:
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
おすすめ度:
☆☆☆★★★★★★★
評価ポイントとしては、管楽器ソロは収録サンプルが、ほぼそのままの形で残されてる点。 サンプルに直接修正を施してるわけではないので、生楽器本来の響きをきちんと確認でき、音源設計に活かすことが出来ます。当たり前かもしれませんが...他の音源(VSLなど)はサンプル自体に修正を施してるケースも珍しくないので。

このサンプル構成が極限まで洗練されており、リソース極小で幅広い演奏に対応できるのが唯一にして最大の強みです。 しかし使い物にならないのは、まるでダメな音源エディットのためであり、サンプルを救い出して組み直す前提、誰がこれを組み直せというのか?

SymphonySeries Woodwinds Ensemble

問題だらけなのはEnsembleの方。

木管アンサンブルの...中身は、ソロ収録のボツの寄せ集めのような印象を受けます。 しかもサンプル自体がピッチの調整エディットを行った状態で固定になってるのか、自然な鳴り方ではありません。 ナチュラルな響きを演出するなら、まだソロ音源の方のデュエット機能を使うほうがマシだと思えます。

Expressionパッチを外して、ピッチ変動の少ない「SustainとStaccatoパッチ主体」で繋ぐなら、使い道はあるかもしれません。

木管ソロの元サンプルの品質の、背景にある積み重ねが見えてくるようです。
なるほど、これだけの収録回数を重ねれば、ソロの品質は磨かれて如かるべきか。

なおオーケストラの雰囲気を手軽に味わうには、こちらも中々有用かも知れません。アンサンブルのイメージを掴む用途。
良くも悪くも即席の域を出ない品質に収まるでしょう。

私の主観によるSymphonySeries Woodwind Ensembleの評価

収録サンプルの品質:
☆☆★★★★★★★★
音源としての仕上がり:
☆☆★★★★★★★★
導入コストの低さ:
☆☆☆☆☆☆★★★★
リソースの軽快さ:
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
おすすめ度:
☆☆★★★★★★★★

あれば使ってみると良いんじゃないかな?くらいの品質。

まとめ

SymphonySeriesのストリングスとは収録場所が違うので、アンサンブルシナジーは発揮されません。
もし他のメーカーでお気に入りのアンサンブル音源を使うのであれば、木管もそちらの同シリーズで統一したほうが良いかもしれません。

単品で見た木管ライブラリはどれも似たりよったりなので、お気に入りのやつを使うのが一番だと思います。


もしも音源がKompleteしか無いのなら

初心者向け⇒KontaktFactoryLibrary、或いはDAW付属のもの
玄人向け⇒あればSymphonySeries(要カスタマイズ)

といった感じでしょうか。


ソロ木管に限れば、私は8dioのClaireシリーズが好きです。 本当にソロ向け。素晴らしくも奏者の指使いそのまましか鳴らせず、扱いが難しいので万人向けじゃない。

癖のないSymphonySeriesの木管や他のオーケストラライブラリとは別枠なので、比較の参考にはなります。