DTM音源レビュー - はじめに

(2022.12.01)

DTM...コンピューターで音楽を作ったり編集すること。をするのに、音源は欠かせないものです。 そして、作品の仕上がりは音源に左右される(可能性が高い)ので、音源素材のことについてコラムをまとめようと思いました。

ここで挙げた音源は、年代を重ねるごとに目新しい製品に霞むと思うので、あくまでも判別基準の例として捉えてくださればと思います。

何について書いてるか

  1. 音源の役割と可能性
  2. 音源の質をどう判断する?
    • 音源の設計概念
    • DTMにおいて何を優先するか
  3. 自分に合った音源を選ぶには?

音源の役割

DTMは、電子機械上で音楽を編集作成する作業です。そして、予め録音された楽器のサンプル(音源)を一音ずつ繋げることでその楽器にメロディを演奏させたり、それらのフレーズを組み合わせたりして曲を作ります。

録音された楽器のサンプル一音(或いは一節)ずつを鍵盤に当てはめたもの。その鍵盤が次々に演奏されてメロディになっていく過程は、まるで人間の話す「言葉」のようです。

『あいうえお』


一音を組み合わせて、意味のある単語、文章、話し声になって、相手に伝わる言葉。 DTM上の「音源サンプル」は、フレーズを奏でるための「一文字の響き」が50音順に整列した状態と同じようなもの。

音源を使うことの制約

用意された言葉をつなぎ合わせて、フレーズを作るのが人間のコミュニケーション。 ただしそこには「用意された言葉に存在しない響き」を、表現できない制約が付きまといます。この制約は音源にも当てはまり、DTM上の音源だけで曲を作るには、録音されたサンプルにない表現を用いることができません。

最小限のサンプル数で編成された音源は、扱うのが簡単ですが、表現方法が限られたものになります。 反対に膨大なサンプル数の音源だと、収録された範囲の様々な表現ができますが、サンプルを選ぶ手間やフレーズを繋ぐ調整、編集に苦労することも少なくありません。

表現の幅と、取扱の難しさが相反。DTM上では、表現の幅を突き詰めるほどに、音源の頻雑な制限や導入コストに悩まされることになる。そこがコンピューター音楽の難しい所です。

人間の言葉は文字数に限りが在るが、音には無数の響きがあり、一切の制約がない。それを、ある種の制約があるコンピューター上で再現することだけにこだわる必要はなく、自由な発想で、好きなように演奏できるのが本来の音楽だと心に留めておきます。

音源の質をどう判断する?

まぁ、コンピューター音楽の利点は、気軽に様々な音色を演奏できることですね。オーケストラ音楽も鍵盤で一発。すごい時代です。 ただ演奏するには、それ専用の音源が必要にはなります。

では音源を選ぶ時に、その質をどう吟味するべきでしょうか?

音質?

数値上では、録音サンプルが高音質で収録されてるかどうか、48000hz_24bitが2022年現在の音源の標準レート。。。数値が大きいほど音質が細やかでリアルな音声サンプルである。可能性が有ります!

一昔前の44100hz_16bitのCD音質を、48,000hz_24bitに変換されたもの。。。は、音質が44100hz_16bitのままデータ容量が増えただけの紛いモノ。こういったものも、無い!とは限らないので、一応頭に入れておきます。

16bitよりは最低でも24bitである方が音像がきちんと反映されてるので、24bitはあると嬉しい。


まぁでも本当に判断すべきは、その収録内容でしょう。 買わないと全貌を見ることが出来ないから、その音源のデモ曲や、色んな人のレビューから参考にするしか無いのですが。。 その限られた情報の中で、自分で選ぶ基準をしっかり持たなくてはなりません。それには音源自体の仕組みや設計概念をよく知っておくのが、近道だと感じています。

音源の設計概念

コンピューターの制限されたリソースの中で、表現の幅をどちら側に広げていくか? 製品の企画段階の意図が、完成品の品質に最も影響します。
企画段階でそのメーカーが表現の何を優先し、どういった音源構成を目指したのか?を理解することが、良し悪しの判断に大きく貢献します。

これをよく知らない時、ピアノ音源ってどれも同じように思ってたのですが。実際に触ってみると、弾き心地が全く違うんです。収録するピアノの年代やメーカー、個体差でも違うし、収録するホール?やお部屋の場所でも違うし、マイクの置き方(聞き手の位置どり)でも変わるし、弾き手のタッチでも響きが変わってくる。

これらの様々な収録パターンを欲張って全部入りしてしまうと、もはやデータに収集がつかなくなり、音源として扱うことも困難でしょう。 そこで、その収録サンプルを選りすぐったり、編集構築したサウンドエンジニアさんの視点でも、音源の仕上がりが変わってきます。

実際にその音源で演奏された曲を聴くのが、良いかも知れません。 こういった響きが欲しい!この響きで曲を描きたいと思えるかどうか?


  • 正統派ピアノ音源のIvory
  • 演奏に脈動感のあるKeyscape
  • 他の楽器やMixの馴染ませやすいCinePiano
  • 演奏者主体のピアノNoire
  • サンプルモデリングで本物のピアノを再現するPianoteq


など、やはり各メーカーで目指している音の響き...というのが違い、得手不得手がはっきりしてます。 各メーカー意識の行き届いてないところ(例えばNoireならリリースの設定)が、ちぐはぐなのが聴いたら分かるので、Noireで軽快な演奏は不向きというのがあります。

音源製作に込められた意識

そして影響が大きく反映されるのが、演奏者の意識。どのような気もちでその一音を鳴らしているのか? ここは電子鍵盤を通じて、自分自身の演奏にも深く深く浸透していくところなので、めちゃくちゃ重要項目です。

⇒ 音を聴いて感じ入るしかありません。


次いで、音響エンジニアさんの意識。どのように収録したか? 楽器とマイクの位置取り。

⇒ 演奏者と、その空間の配置が、音から伝わって、少しずつ鮮明に描かれてきます。


その後に、音源編集者(エンジニアさん)の意識。ここもまた音源の出来に大きく左右されてしまうので、なかなか。

⇒ 完成された音源から、色んなことを感じ、音の形作られた背景を想像することができると思います。

サンプルモデリング音源について

ここからは、音源編集者さんの腕の見せ所についてです。
サンプルモデリングというのは、特に弦楽器や木管楽器などで重宝します。サンプルモデリング主体の音源で有名なのはSWAMか。

例えばビブラートの表現を、収録サンプルで完全に賄おうとすると、ビブラートの掛かり具合を自分で調整することが出来ません。収録音で固定なまま。

ビブラート一つ突き詰めるために様々なパターンで、レガート、ビブラート表現を収録しようとすると、やはりこれも大変なサンプル数となってしまうので、音源によっては擬似的なビブラートや抑揚をMIDI鍵盤のコントロールで再現する技術、というのが使われてたりもします。すると、少ないサンプルリソースで自在な演奏パターンを扱える強みが生まれます。

しかしこれ、実際の演奏表現を収録した場合と比べて、機械的な演奏を感じさせてしまう面も強くなる。 そこを割り切って、あくまでも抑揚を伝える手段として使うべし。かわりに、演奏に自分の意図をしっかり入れ込むことが出来ます。


モデリングは、そこまで難しいことではありません。特に初期音源しか手元にない時は、持ってる音源で自分なりに可能性を開拓できる状況です。

例えばビブラート表現は、LFO三角(正弦)波を用い、わずかの音量変化と合わせて、ピッチやLowPassフィルターのCutoff、倍音EQのGainなどを揺らがせることで、何もない初期音源からもビブラートの可能性を開拓できます。LFOの深さをmidiCCで描画することで、このビブラートを手動でコントロールできます。

DTMにおいて何を優先するか

各、DTMerさんたちで個性が遺憾なく発揮されますよう。 それぞれに合った価値観をもって、音源を見つけられたら良いですね。

例えば私の環境は、扱えるリソースに限りが在るため、優先すべきは一音の収録サンプルの品質、奏者としての意識が宿った一音、そして収録後に余計な編集が掛かっていないものです。あらゆる場面に訴えかける一音。。。とか、贅沢そうですが、そこは自分のエディットの経験でうまくカバーするようにしてます。

まぁ、どんな価値観を持ってしても、扱う音源の特性と、自分の作品の方向性が一致してることが最重要だと思います。


・簡易的な打ち込みで、リアルな音を再現したい?
・もっと繊細な表現をしたい?
・ソロを際立たせたい?
・オーケストラ楽器の統一感?
・あのジャンルの曲に必要なサンプル?


それ以外に、昔のFM音源だって今でも優れた面が再見できる。 ほとんどリソースを必要としないコストで、名曲と呼ばれる楽曲の数々を生み出せるのですから。

昨今のリアルな収録に埋もれがちなレガシー音源からも、学ぶ点が多いと思います。

自分に合った音源を選ぶには?

ということでまとめ。

欲張る前に、手持ちの音源を上手く活用する。自分のスキルを磨く。
欲しい音(ただ良い音という基準ではない)が明確になった状態で、いくつか音源の候補を調べる。
それぞれのデモを聴き比べる。
無料版の配布音源があれば、そのメーカーの音源構築の特性や、収録サンプルの癖を察せる。レビューを調べる。

急ぎでなければ、選んだ製品をセール時(11月ブラックフライデーや年末セール、6月サマーセール等)に買う。 勝った音源が素晴らしいとあればずっと愛用すればいいし、外れだと感じたなら、なぜそうなったかを反省して今後に活かす必要が在る。

。。。基本的に有料の音源はなくても音楽は作れる。を前提に。