携帯小説✨月見草
携帯小説「月見草」
月見草
……あ、人間が来たよ?
それは何処のだい。まさか迷子かな?
いや、きっと違う。
まだおぼつかない足取りは、戸惑いながらもしっかりと。
一点を目指している。
小さいか、中くらいか。
いったい何を見ているのだろう。
話しかけてみるかい?
……いや、ぼくは止めとくよ。
どうして?
……どうしても、さ。
ほうほうと、月夜の晩に影が2つ。
人間と、もう一つは?
「やぁ、こんにちは。おつきさま。今日も一段と綺麗だね」
……ぼくじゃないんだね?
「きっとこれからも、俺は君を追い続けるよ」
人間は、そう言って。
光の照らす先を何処までも追っていくのだろう。
過ぎ去った。
過ぎ去った、人間。
足跡が一つ。
区切りの無く、何処からか唯。真っ直ぐと伸びて。
いつまでか、どこまでそれは、続くのか。
ぼくはずっと此処に居るのに...
……月夜の照らす、その先は
……足跡の其処、月見草