携帯小説✨雪世界
携帯小説「雪世界」
薪の火に。
赤の並ぶのではなく。もう黒い、墨だけとなり病む。
火が。火が、焼け…
ダメだ、燃えない。
……何をしてるの?
私は言った。
いいながら、ちらちらとそれを邪魔していた。
「俺には必要なんだ。」
それでもなお、火を生み出そうとする。
何故だ。なぜ其処までして、妨げるのだ;
かじかむ、手が震え、指先が失われ。
感覚が、それに奪われていく。
凍える大気に、次々と刺され。
連続した冷気は、ひんやりと彼の生命を蝕んでいった。
白の空間。
綿のそれよりも脆く、氷のそれより冷たい。
あたたかな、ひと時の暖に。
甘い黒糖。赤々と燃える火は、彼にとって必要だ。
だが。
私にとっては…?
「死んじまうじゃねえか。もう限界なんだぞ」
彼は言う。
しかしなお、脆く淡い、存在は。いかがせんと零れ落ちた。
薪の上に。
さらさらと舞い降りる。舞い降りて、
ずさりと、後の続く塊となり。覆い尽くす。
……
「もうダメだ…」
———・・・…
白く、白く。
赤など要らない。
それが「私」だ。
たとえどんなに冷たかろうと。
私が「私」である限り、赤で染めることは許さない。
跡形も無くなっていく。
火は要らない。
暖かさなど要らない。
溶けちまうじゃねぇか。