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Timelessberry✨星の生まれる場所

2−1「星の生まれる場所」

全ては光。星の命そのものが。


焦点のぼやけた視界に、虚ろな光が浮かんだ。
マーリユイトの元に、一つ。

最果ての地から、その光を連れ出すかのように。
いったい、何処に連れていくのか。


最果ての中心には水流の渦まく次元の扉が存在した。
幾つもの光が反時計回りの渦に導かれ、その渦の中心へと誘われていく。
螺旋状に巡りながら、道筋は底の方へと続いていくのだった。

まるで竜のようだった。


光は一斉に、その竜の背中に乗って下降していくように見える。
マーリユイトはその時、自らも輝く光の一つなのだということを理解する。

周りの皆も同じで、一つ一つが命であり純粋な光なのだ。







深い水底へと光の呑まれていく光景は、夜空が映し出す星の巡りだとも思える。
底は天球儀の中心で、導かれる生命は螺旋状に渦巻く星の軌跡そのもの。



《宇宙って、止めどなく流れる水のようなモノなのか...》


とその時マーリユイトは思った。
湖の底に、不思議と懐かしい感覚を思い出したのだ...

底で自らの流れが留まったとしても、其処は終わりの場所じゃない。
枯れ果てた先には喪失の物語を知り、それが新たな幻想の兆しに変わる。




『ようやく呪縛から解き放たれるのだ』


アマテラスの火が、水竜との邂逅を迎えた。

どうやら炎の記憶は、
人の尺度から思えば長い年月の間、最果ての地に沈められていたらしい。
永遠とも呼べる時が、等しい連鎖の中に縛られ続けていた。

何度も同じことが繰り返される死歴など、もはや時の狭間に閉じ込められた牢獄だ。
そこでは、存在する未来の可能性すら奪われているのだ。



どうして、自らの存在が永遠であると云いきれよう。
それはもう遥か昔の時代に朽ち果ててしまったかしれない。
既に誰か違う存在の手によって形を変えられたかも分からない。
さらには時間が経つにつれ、大切にしていた宝の在り処を忘れる事だってあるのだ。

「私」は永遠ではない。


『ならば我を呼び出した小さな御子に、我が運命の矛先を託すべきなのだ』


過去も未来もない、時の狭間に永遠の形が埋め込まれる時。
そこに存在した全ては軽々と次元を超えて、あらゆる場所へと解き放たれるであろう...
先代の石の一粒の思い...夢(アメ)を灯す炎は、既にマーリユイトの無意識の中に受け継がれていた。

そうか、そなたが。
水竜は、古えの炎の継承者「マーリユイト」に目を向けた。


『まるで涯しなき水底に、ゆっくりと沈んでゆくかの様よ...
 そなたは現世に舞い戻り、何れのことを夜に知らしめたるか?』


失われた記憶。
存在する過去と未来から失われた記憶。

マーリユイトは炎の記憶と共に、水竜に抱かれて底の方へと沈んでいく。

閉ざされた暗闇の底に、沈むとあれども。
真に深き闇を知るにはあまりに疎遠・・・
底には何もない。何もない事こそが底に存在するのだ。


水竜と天を照す炎の言霊が、深く耳の中に溶けあって共鳴し、やがて一つに結ばれる。

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