EXS24 ビブラート設定(弦楽器・ヴァイオリン編)

EXS24ヴァイオリン音源のビブラートの反映

ヴァイオリンなどの弦楽器の演奏は、ビブラートの抑揚が欠かせないほど重要です。 通常はトラックオートメーションのモジュレーション[Ctrl#1]を調節して、ビブラートの掛かり具合を制御します... しかしEXS24音源はパラメータが初期設定のままだと、ビブラートが正しく反映してくれません。


Logic付属のソロ・ヴァイオリンでテスト再生

テスト用に、付属のヴァイオリン(ソロ)の音を使ってみます、何処にあるのか。ついでに把握しときましょう。 初見だとオーケストラ編成のヴァイオリンしかないように映る、見つけるにはちょっと操作が必要です。


トラック音源をEXS24に設定し、カーソルを合わせると、右のライブラリにEXS24専用の一覧が表示されます。
ソロバイオリン

Logic9だと、EXS24フォルダ一覧の「Pop Strings」→「Violin(Arco)」でソロ音源に辿り着きます(o _ o。) チャンネルストリップのプリセットには何処にも無いから、このヴァイオリン探すの苦労しましたよ。 (各楽器が何処にあるか、整理しておくのは重要)...さて。



試しに、以下のように描いた譜面をソロ・ヴァイオリンで演奏させてみます。
バイオリン譜面


単にベタ打ち。普通ど〜りに鳴ります(' '*)
サンプリング音源の段階で、少しビブラート掛かってますね。



では、もっとビブラートを掛けて行きたいと思います。通常は[#Ctrl1]モジュレーションのコントロールを弄って反映させます。 バイオリン譜面ビブラート


これだけだとビブラートに変化ありません。 どういう事かというと、ビブラートやピッチ等を上下させるには、所定のコントロールチェンジの変化(出力)をEXS24内部のパラメータへと反映させるパス(入力回路)の設定が必要なのです。

EXS24のエディタ上で、ビブラートが反映するよう設定

EXS24タブをクリックすると音源の鳴らし方をエディタ上を編集できます。


EXS24バイオリン(ソロ)の初期設定は以下のようになっていますが バイオリン譜面


↓ それをシンプルに、このように書き加えてみます(一例)
バイオリン1EXS24


変更点は、中段の部分。追加した4つの設定は順番を変えても問題ない。
ビブラートLFO


以上のようにカスタマイズした後で、改めて譜面を鳴らしてみますと・・・
バイオリン譜面ビブラート


という感じに、ビブラートが反映するようになってます。



何となく解説が必要そうな各種コントロールチェンジの割り当て。
少しメカニズムを見て行きましょうか。


と...こういう設定アレコレって、実際のビブラートの成り立ちを知っとかなくちゃ応用が効かない。 一度ビブラートについておさらいしましょう。

そもそもビブラートとは?

ビブラートは音の揺らぎ。奏でた音を遠くまで響かせる、遠くまで届いて欲しい!という祈りが込められた音、と私は感じてます。
ビブラートが奏でる振動の波とは、主に2つのパラメータ変化が合わさって演奏に組み込まれています。
  • ビブラートの深さ...ビブラート効果が「どれくらい」強く反映されるか?
  • ビブラートの速さ...揺れるスピードは「どれくらい」速いか? 或いはゆっくりか?

ビブラート効果の「強さ」と「スピード」
この2つを、何らかのコントロールチェンジで制御できるようパスを繋ぐわけです。

一例の解答として、EXS24の内部をカスタムした結果が↓
ビブラートLFO
  • 左2つが、ビブラート効果の強さに関わる設定
  • 右2つが、ビブラートの速さに関する設定です

ビブラート効果の反映と「強さ」の設定(弦楽器の場合)

弦楽器のビブラート効果を反映させる要が、一番左の[Pitch/LFO1/Ctrl#1]でセットした箇所です。 これは音程ピッチを、LFO1の波形で上下させ、その上下の度合を「モジュレーション=Ctrl#1」で制御するといった設定です。ビブラートといえば[Ctrl#1]で制御する常。どのシンセでも大体。
[Ctrl#1=1(MAX)]時のビブラートの深さ(ピッチ増減の範囲)を、右側のバーで上下を指定して決めることが出来ます。値は乗算されるので[Ctrl#1=0]時は効果が0になります。

そもそもLFO1とは?

何か知らん単語が出てきたな...LFO(low frequency oscillators:低周波オシレータ)。といった、予めEXS24に組み込まれている低周波振動(内のLFO1)をビブラートの揺らぎに活用してるわけですね。波形は、EXS24画面の左下にある此処で形を指定することが出来ます。ビブラートに適するのは三角波。
LFO1波形

基本のビブラート振動数(揺れるスピード)は此処[Rate]のツマミで調節できる。
高音域を担当する「バイオリン」ほど数値は大きくなる。以下、ビオラ >> チェロ >> コントラバス...の順にビブラート振動数[Rate]が減少していくのが自然です。

ちなみにノートオンからビブラートの掛かるまでタイミングを[EG...delay]で調整できる。らしいが、しかしEXS24のLFO1[EG]に関しては、動かすと変なポルタメントがかかるので0にしとかなくちゃいけない(2018年時点でのバグだそう)。遅延ビブラートで重宝できるだろうにもったいない!!

ビブラートの「速さ」を変化させる設定

ビブラート割り当て
さて。残りの右側2つについて。
これらはLFO1[Rate]で設定した「ビブラートの速さ」を演奏に応じて変化させる設定です。

左から3番目から解説。
これは「エクスプレッション=Ctrl#11」の値に応じてビブラート振動数も変化していく設定です。
エクスプレッションは、元々クレッシェンドとか音量の変化に関するパラメータですが、そこにビブラートの速さにもパスを繋いであげました。 [Exp]の値が上昇して音が大きくなるほど、ビブラートはより細かく震えるようになる。

試しに「エクスプレッション=Ctrl#11」も弄ってみましょう。
バイオリン譜面エクスプレッション




実際ヴァイオリンを弾く気持ちで想像してみてください、きっと奏法において自然なことに思えそうです。
弦を強く鳴らす為に押さえる左手の意識が高まるほど、ビブラートの揺れは速く感じると思いませんか? より遠くまで響かせるために。


ビブラート割り当て
このことは、キーが高音域になることでも当てはまる。左から4番目の設定。
[Key]の高さに応じてLFO[Rate]の値が変化します。【C3】の音=(×0)の値を基準に、それより高くなればなるほど+プラスに、低ければ低くなるほど-マイナスに...乗算値が上乗せされます。 最も低い音の[key]で押したときは(-1)×乗算値の修正値になり、最も高い[key]で押した時は(+1)×乗算値となります。

キーが高くなるほど、ビブラートの揺れが早くなるのは理に適います。
高音域のバイオリンとか顕著ですよ、弦のピッチ幅がどんどん狭くなるから、ビブラートの上下はそれだけ速く行ったり来たりするし。 反対に低音域のチェロやコントラバスとかは、弦のピッチ幅に長さがあるから、ビブラートの左手が広く動く分、ビブラートの振動もゆっくり鳴るのです。



このように楽器の特性を知れば知るほど、より現実味あるビブラートをシンセ上にも反映できると思われます。


管楽器のビブラート設定はまた別

ビブラートの事で補足ですが、フルートやオーボエなどの管楽器は、ビブラート効果(深さ)の設定項目が弦とは少し異なってきます。 演奏する息[ブレスコントロール]によるビブラートの効果が、ピッチとは異なるエフェクト(音量とかフィルターとか)に掛かって来るので、その前にフィルターの調整を体感する必要があるかな、その前にストリングスの奏法その他も未だ残ってるし、この何回目か後に管楽器ビブラートのコラムも掲載するかな。


次回バイオリンのポルタメント設定に移ります。ぎゅい〜んってピッチの変化しながら音のなるアレです。