そこに何もなければ、僕を連れて行こうとはしない

それは、拒絶の意志を発した言葉。

「その先に何があるのか?」

おじいちゃんに模した誰かの影に訪ねた。
昔住んでた付近の団地、自分のとこの棟の横に差し掛かってきたところで

その影が、ポストの辺りを観察してる場面で気づいた。
一目見て、こいつはヤバイと感じた。見つかったらDAMEだと。

家に辿りつぐ直前で後ろを付けられたため、自宅の場所を悟られるわけにいかず
棟を素通りしてやり過ごそうとした。その老人の影は後ろをついてくる。
冷や汗モノだ。帽子をかぶり、薄いベージュのコートを羽織り、目元を見せないようにして
後ろをついてくるのだ。

「ちょっとついてきてもらえませんかね?」

そしてとうとう、声を掛けられた。

このセリフ!! 警察官のそれとそっくりではないか。
こいつ、強制的に何処かに連れ立って、向こうの都合のいいことを押し付けるつもりじゃないか!
悟るわけです。夢の中ですからね。正体がわかれば、相手の思ってること分かるんですよ、確定的に。

「その先に何があるの?」

私は、いや。
僕はそう返す。そしたらお爺ちゃんに模した監査官の影は

「何でもありませんよ。ただ付いてくればいいのです」と答えた、

そして手を掴み、強制的に連れだそうとしたのだ、
こいつは姿形を生前のおじいちゃんに模してるが、存在が違うのだ。
眼の奥がおじいちゃんではない、あんなに冷たくない。優しさのかけらもない。

自分の目的のみに、いや、おそらく仕組みやご都合主義的な世界のルールに取り込まれ、
機械的に決まり事からハズれた人間を連行する役割。
こいつの名は既にない、ただのロボット、人形。だから「影」。

おそらく連れだされたら「アウト」で。ホントに生きた心地がしなかったが
一つ前の言葉。こいつは言葉に致命的なミスを犯したのに気づく。「何でもありませんよ」という言葉。

「それは『嘘』だ!」

僕は言った。あいつは怪訝な顔を擦る。
焦りの表情を見せて、無理やり連れだそうとする。それ見たことか。
僕は、そこに追い打ちを掛けるように強く言い放った。

「そこに何もなければ、僕を連れて行こうとはしない!」

確信を持って、一字一句に力を込めてそう言い放った。

言葉の嘘は、存在を、そのセカイを消失させるモノ。

嘘の代償
 

あいつの言葉は、力を失った。だから此処で自分の意志を通すことが出来た。
次の展開に足を運ぶことができたんだ。

ちなみに此処まで繰る経緯として
「僕」は小学校に居たんだ。そこで中学校の同級生たちと一緒に授業を受けていた。

その授業がオカシイのだ。先生の『目』が尋常じゃない
夢ではここも、影によって操られていた場所だった。授業は、影の支配下にある
影は年賀状を、書かせようとした。「僕」に、書いてポストに入れよ!と。おそらく何百枚単位で。

そんなの無理だ。事情を知ってるなら、そうだろう。道理に反することなのだ。
僕は学校の決まり事を破って、本当に守らねばならない一線を死守した。

差出人を、存在しないものとして、はがきを提出したのだ。
宛先もなし。差出人も詠み人しらず。これは「黄泉人知らず」ということ。

おそらく、受け持ちの先生の影は、僕の不定に気づいたのだろう。
次の授業は体育祭の準備の予行演習、そこで、また時間前に所定の位置まで行って待機。
5分位前に行ったはずだが、グラウンドに並んだ時も、妙な違和感があった、

体育委員を称する生徒が、何かをチェック(服装検査? 点呼?)していた。
そして次の授業に出向く際の先生のあの目。あの目が、ヤバかったのだ。
赤黒い、陰湿で、誰かを嵌めようとする目。

ここで今から何が行われるのか?
危険を感じた。だからそれが始まる前に
授業を抜けだしたのだ。その時、転校生の中野くんも一緒だった。

彼は、彼のことはもともと信用できる人だったから、つい口にしてしまった

「ねぇ、何かここオカシイよね?」 って

彼はふむ、と相槌をして一緒についてくる。

「あの先生の目、あの目はヤバイ。分かるんだ。あれはとにかくヤバイって」

彼はふむ、と相槌をして一緒についてくる。反応がオカシイ。僕の言葉を疑っているのか?

「キミは、キミは信用してもイイよね? いや、分からないけれど、気づいたことはキミに言うよ」

そして自分の持ち物を取りに4階の教室に帰ってきた
中野くんはそのことを確認して、特に僕には何もせず元の場所に戻っていったみたいだ。

その後、放送で、全校放送にて、通達される

「本日の5限目、授業に出なかったはみ出し者が云々かんぬん、」

いや、これは出なかったから誰でも分かるんだけどさ。監視の目がつきまとう前兆だ。
とにかく、ここから抜けださねばって思って、4階の窓から鞄持って直ぐ様飛び立った!
夢の中だ、空は滑空できる。あいつらは、無理だ。だから逃げおおせる。

あとは、家に帰り着けばいいだけ。その先に、ポストに提出した年賀状を投函する影の姿が見えた。
そのハガキは、永遠にたどり着かない。何処にも辿り着かない、決まりに従わせようとしたばかりに、それを拒んだばかりに無駄なものが増えただけ。

ポストはぎゅうぎゅういっぱいだ。入らない、入らないから無理やり詰めようとしていた。ほら、存在しないからすぐゴミでいっぱいだ。もう機能しなくなるね。
その様子をお爺ちゃんの影がみていた。

あいつが、あいつがヤバイのだと。直感した。
そして冒頭の場面にて鉢合わせすることになったのだ。

結局は何とか難を逃れたが。
あれはおそらくコレまでの現実を、想念的に見た夢。
あんなのが過去「僕」にとっての現実だったのか。恐ろしい夢だ。

この夢は、おじいちゃんの骨の記憶によるものだろうか。
骨は半分、向こう側。骨は半分、こちら側。

影は、存在を感付かれた。
人々はコレまでのように、思い通りには動かなくなった。

 

骨の基点はこちら側


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